俳句作品集

俳句作品集 · 20日 11月 2023
三味線をつつむ絹布や秋涼し 旧花街足にまつはる草の露 シーサーの阿形秋雨垂らしつつ 水平の蜻蛉の羽みづみづし 朴の実の朱玉鴉の嘴誘ふ (「俳句四季」2023年12月号 第11回俳句四季新人賞最終候補者競詠)
俳句作品集 · 20日 11月 2022
経本のルビに長音星流る 冷やかや宇宙望遠鏡錆びず 老松を囲みて群るる曼珠沙華 虫喰ひの窯変めける蔦紅葉 菰樽の銘の髭文字冴えにけり (「俳句四季」2022年12月号 第10回俳句四季新人賞最終候補者競詠)
俳句作品集 · 30日 9月 2022
草に寝て血の平らかに水の春 犬探す貼り紙濡るる雪のひま 焼売に混ずる軟骨おぼろ月 菜の花の終はりに骨の白さかな のどけしや草汁滲む犀のくち 川の名を分かつ水門飛花落花 クッキーに砂漠の模様目借時 万緑や傷痍軍人植樹の碑 錠剤のロゴの淡青梅雨きざす 倒木の木くらげ雨を容れゆたか 瞑目の端の涙や夕蛍 胴切りの覇王樹に脊白白と 横顔に三角あまた大西日...
俳句作品集 · 30日 7月 2022
ふりかけのたまごつぶつぶ鳥曇 啓蟄や畦に埋もるる三角点 雑巾の糸攣る木床卒業す 尼寺にこどものこゑや花海棠 緑蔭の避難ハッチの厨子めきぬ 吊り橋のやうなティアラや青葉風 戸隠に鯨の化石山滴る 見本より大きサイダー浅草寺 看板に茸の生ふる町中華 秋の灯や脂浮きたる醤油皿 きぬぎぬの林檎の底に花のあと 小鳥来る吹きつ晒しの能舞台...
俳句作品集 · 30日 4月 2022
雛壇の雛より小さき牛車かな 永き日の大きサモエド梳る 花冷やベンチの隙のソーセージ 万愚節フライドポテト長長し 釈奠や祭器の鱈子ラップされ カリンバの長音階の緑雨かな 背中毛の縞栗鼠めけるシャワーの子 スプーンに漣となるシャーベット 俎板は牛乳パック鯵大漁 涼しさやカフェに醤油の一斗缶 鯊釣の餌虫は切られ針刺され 嗤はれしこゑのまぼろし夜長なり...
俳句作品集 · 01日 8月 2021
けふペダル漕ぎ初むる子や蝶の昼 夏隣ウッドデッキに塗る木色 てんとむし番ふ一粒万倍日 丸まりし蟻を咥ふる蟻速し 夏服を手紙のやうに畳みけり 流れ星今心臓を過る血よ 合戦場跡に早生なる林檎捥ぐ 金風やアトリエを這ふ綿埃 サロマ湖の牡蠣に涙の甘さかな 七草のすずなすずしろ太り初む (「俳句界」2021年8月号「俳句の未来人」掲載)
俳句作品集 · 01日 1月 2021
背泳ぎの天井の線航路とす 樹皮のごと乾く洗濯物に蟬 ひらがなを獲得せし子春隣 (第十一回北斗賞佳作)
俳句作品集 · 01日 1月 2020
初蝶の田の水口に休みをり 海に向く千手観音鳥渡る 大筆の墨を絞りて冬初め (第十回北斗賞佳作)
俳句作品集 · 01日 1月 2019
山遠く古筆のごとき春の雨 春雨や淡くなりゆく竹林 噺家の羽織脱ぎ捨て立夏かな 一歳の初散髪や夏はじめ 手水舎に白き沢蟹歩み出づ 唐黍の粒一斉に点灯す 新涼や墨汁つけしガラスペン 縞栗鼠の秋野に花を食べこぼし (第九回北斗賞準賞)